「TOB」って、何回調べても忘れませんか?
正直に書きます。私は、持っている株にTOBの発表が出るたびに調べています。そして毎回、きれいに忘れています。次にTOBが来たときには、MBOとごっちゃになって、また分からなくなっているのです😅
カタカナ3文字が2つ並んでいて、しかも意味が近いところで使われる言葉なので、混ざるのが普通です。覚えられないほうが悪い、なんてことはありません。
この記事では、次の3つが分かるように整理しました。
- ①TOBとMBOの違い(もう混同しないための覚え方)
- ②自分の持ち株にTOBが来たら、何をすればいいのか
- ③NISAで持っていたときの、意外な注意点
そして、この記事は「一度読んで終わり」ではなく、忘れたらまた戻ってくる場所として書きました。安心して忘れてください🐈
🔤 TOBとMBOの違い:混ざるのには理由があります
まずはここをいちばん丁寧にいきます。混乱の正体が分かると、二度と迷わなくなります。
TOB=「買い方」の名前
TOB(ティー・オー・ビー/株式公開買付け)は、買い方の名前です。「この会社の株を、1株◯◯円で、◯月◯日まで買い取ります」と公表して、市場の外でまとめて買い集めるやり方のことをいいます。
ふだん私たちが証券アプリでポチッと売買するのは「市場の中」。TOBは、その外側で「まとめ買いします」と宣言する方法だとイメージしてください。
MBO=「買う人」の名前
MBO(エム・ビー・オー/マネジメント・バイアウト)は、買う人の名前です。その会社の経営陣や創業家が、自分の会社の株を買い取ること。目的は多くの場合、上場をやめて非公開化することです。
そもそも、この2つは並ぶ言葉ではありません
ここが種明かしです。TOBとMBOは、同じ列に並べて比べる言葉ではありません。MBOという目的を、TOBというやり方で実行するのです。だから「MBOのためのTOB」という組み合わせが成り立ちます。
TOBは「どうやって買うか」、MBOは「誰が買うか」。
この一文だけ持ち帰ってもらえれば十分です。対比で言えば、他社がTOBしてくる場合は「会社ごと買われる」話。経営陣がTOBする場合が「MBO」です。
なお、会社の同意を得ないままTOBを仕掛けるケースもあり、これは「敵対的買収(同意なき買収)」と呼ばれます。ここでは名前だけ覚えておけばOKです。

📊 なぜ今、こんなに増えているのか
実は、上場廃止は今どんどん増えています。日本経済新聞(東証集計)によると、上場廃止の社数は2023年 61社 → 2024年 94社 → 2025年 124社。2年連続で過去最多を更新しました。
しかも2025年の124社のうち、TOB・MBOによるものが112社(TOB 80社・MBO 32社/東京商工リサーチ)。つまり「業績が悪くて退場」ではなく、「買われて市場から出ていく」がほとんどなのです。

上場廃止は2年連続で過去最多です。2025年の124社のうち、TOB・MBOによるものが112社(TOB80社・MBO32社)を占めました。1年で124社は、ざっくり「3日に1社」が市場から消えた計算になります。上場廃止社数は日本経済新聞(東京証券取引所の集計)、TOB・MBOの内訳は東京商工リサーチの公表数値をもとに筆者作成(2026年8月時点)。2023年・2024年は内訳が公表されていないため、色分けは2025年のみ表示しています。
グラフを見ると、棒がぐんぐん伸びているのが分かります。そして2025年の棒の大部分が、TOB・MBOで占められています。1年で124社ということは、ざっくり3日に1社が市場から消えた計算。もう「めったにないこと」ではありません。
理由は、大きく2つだけ押さえておけば十分です。
- ①東証が「株価や資本コストを意識した経営」を求めるようになり、上場を続けるコストと手間が重くなった
- ②物言う株主(アクティビスト)などからの買収提案が活発になった(2025年のTOBの買い手はファンドが22社で最多の約28%/東京商工リサーチ)
身近な例でいうと、サロンパスの久光製薬も2026年1月にMBOを発表し、約4,000億円規模で非公開化する方針を明らかにしました(同年2月にTOBが成立)。名前を知っている会社でも、普通に起きていることなのです。
結果として、東証の上場企業数も2025年末で3,782社(前年から60社減)と、2年連続の減少になっています(日本総研)。
⚖️【2026年5月から】TOBのルールが20年ぶりに変わりました
ここは時事的な話です。これまでは、株を「3分の1超」(約33%)取得するならTOBが義務でした。それが2026年5月1日から「30%超」に引き下げられました。
さらに、これまで対象外だった「市場の中での買い集め」もTOBの対象になりました。
かみくだくと、買い集めのハードルが下がり、TOBという形をとらなければいけない場面が増えたということ。つまり私たち個人投資家が、自分の持ち株でTOBに出くわす機会は、今までより増える方向です。
細かい例外まで追う必要はありません。「大まかにこう変わった」で十分です(制度は今後も変わる可能性があります)。
💹 TOBが発表されると、株価はどうなるの?
たいてい、直前の株価より高い値段がつきます
TOB価格は、発表直前の株価に上乗せ(プレミアム)されるのが一般的です。例えばパラマウントベッドホールディングス(7817)のケースでは、発表直前の株価2,671円に対してTOB価格3,530円。約32%の上乗せでした。
なぜ高いのか。答えはシンプルで、安い値段では株主が売ってくれないからです。買う側は「今の株価より高く買います」と言わないと、必要な株数を集められません。だからTOBは、株主にとって基本的に悪い話ではないのです。
でも、TOB価格ぴったりにはなりません
発表翌日に株価は跳ね上がりますが、TOB価格の数円下でほとんど動かなくなることが多いです。ここは初めて見ると必ず不思議に思うところ。
理由は、TOBが必ず成立するとは限らないから。不成立になれば株価は元に戻ってしまいます。その不安の分だけ、ほんの少し安く取引されるわけです。
実例が芝浦電子(6957)です。台湾のヤゲオが会社の同意なくTOBを提案 → ミネベアミツミが、より高い1株4,500円でTOBを表明 → ところが応募が集まらず2025年9月に不成立 → 結局ヤゲオが4,300円で成立(応募87%)→ 2026年1月13日に上場廃止、という流れでした。
つまり、高い値段を出した方が必ず勝つわけではありません。「TOB価格まで必ず上がる」と思い込むのは危険です。
ここに挙げた2社は実際に私が保有していた銘柄でした😊
🧭【本題】持っている株にTOBが来たら、どうすればいい?
選択肢は3つです。表にまとめます。
| どうする? | いくら受け取れる? | 手続き | お金が入る時期 |
|---|---|---|---|
| ①TOBに応募する | 公開買付価格ちょうど | 自分の証券会社が公開買付代理人でなければ、その証券会社に口座を開いて株を移す手続きが必要 | 決済開始日以降(数週間〜) |
| ②上場廃止の前営業日までに市場で売る | そのときの市場価格から手数料を引いた額(TOB価格よりわずかに安いことが多い) | いつもの売却と同じ | 売却日を含めて3営業日目 |
| ③何もしない | スクイーズアウト(株式併合などで少数株主の株を強制的に買い取る手続き)により、通常はTOB価格と同額 | 手続きは不要だが、原則として確定申告が必要になる場合がある | 上場廃止の数か月後 |
③はさらに、損益通算も繰越控除も使えないという点に注意が必要です(税金の扱いは一般論です。最終的にはご自身の証券会社・税務署・専門家にご確認ください)。
なお、上場廃止が決まった株は、原則として1か月間「整理銘柄」に指定されます。証券会社の画面に突然「整理銘柄」と出るとギョッとしますが、これは「もうすぐ上場廃止になりますよ」というお知らせのようなもの。この期間中も、上場廃止日の前営業日までは、いつもどおり売買できます。あわてなくて大丈夫です。
まとめると、急いで損切りする必要はまったくありません。ただ「放置」がいちばん面倒、ということです。
⚠️【NISAの人は要注意】応募する前に、これだけは知ってください
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
まず、NISA口座のままではTOBに応募できません。応募するには、いったんNISA口座から課税口座(特定口座・一般口座)へ払い出す必要があります(SBI証券では電話での依頼が必要・2026年8月時点)。
そして問題はここ。払い出すと、取得価格は「払い出した日の終値」に置き換わります。NISAで買ったときの値段は引き継がれません。つまり、それまでの非課税の利益が、そこで終わってしまうのです。
しかも、何もしないで上場廃止を迎えた場合も同じです。上場廃止に伴ってNISA口座から強制的に払い出されるため、NISA内での売却にはなりません。
だから結論はこうなります。NISAで持っている株にTOBが来たら、上場廃止の前営業日までに、いつもどおり市場で売るのがいちばんシンプルで、非課税のまま終われる。
ただし、手続きの細かいところは証券会社ごとに違います。必ず自分の証券会社の案内を確認してくださいね。
なお、これは個別株の話です。投資信託が終わってしまう「繰上償還」は別の話なので、混同しないようにしてください。詳しくはこちら👇
投資信託が「なくなる」ことがある?繰上償還のしくみとNISAの落とし穴
🏠【やんともの話】この8か月で、持っていた4社が市場から消えました
私は日本の高配当株を分散して長期で持っているのですが、この8か月ほどの間に、持っていた4社がMBOや買収で相次いで上場廃止になりました。知ったきっかけは、どれもニュースでした。
4社とも特定口座で持っていたので、上で書いたNISAの落とし穴には当たりませんでした。発表があってから上場廃止までの期間内に、いつもどおり市場で売っています。TOBに応募する手続きは踏んでいません。
正直な気持ちを書くと、分散して買っていたのに、売らなきゃいけない日が来るとは思いませんでした。高値で買ってもらえるのはうれしい反面、その会社の分だけ配当が減るので、残念でもあります。
ちなみに、この日は窓辺のもなかが外の鳥をじーっと見つめていて、ケージのココアはチモシーをむしゃむしゃ食べていました。うちの中はいつも通りです🐈🐰

なぜ何十社も分散して持っているのか、その背景はこちら👇
特定口座の個別株はどう相続する?85銘柄を妻に引き継ぐために調べたこと
配当そのもののしくみを知りたい方はこちら👇
配当金ってなに?いつ・いくらもらえる?しくみとNISAの落とし穴をやさしく解説
🚫「TOBされそうな株」を狙うのはアリ?
はっきり書きます。ナシです。
理由は単純で、いつ、どの会社が、どんな形で市場から出ていくかは誰にも分からないからです。私自身、4社とも寝耳に水でした。そして芝浦電子の例のとおり、高い値段が出た方が必ず勝つわけでもありません。
プレミアムだけを狙って値動きを追いかけるのは、私の考える長期投資とは別のゲームです。私は株を始めたころ、短期の値動きに振り回されて負けた経験があります。詳しくはこちら👇
IPOってなに?初めて買った株がIPO株で、私が負けた話
🌏 オルカンや投資信託で持っている人は、何もしなくて大丈夫
ここまで読んで不安になった、オルカン積立だけの方へ。安心してください。
オルカンやS&P500の中に入っている会社がTOBで消えても、運用会社が中で自動的に売却・入れ替えを行います。私たちがやることはゼロです。
この記事の話は、個別株を持っている人だけの話です。
📝 まとめ
- ①TOBは「どうやって買うか」、MBOは「誰が買うか」。並ぶ言葉ではなく、MBOという目的をTOBというやり方で実行する
- ②上場廃止は2年連続で過去最多。2025年は124社で、うちTOB・MBOが112社
- ③持ち株にTOBが来ても急がなくていい。ただし「放置」がいちばん面倒
- ④NISAの株は、上場廃止の前営業日までに市場で売るのがいちばんシンプル
投資には元本割れのリスクが常に伴います。制度や手続きも変わっていきますので、そのときどきの最新情報を確認しながら、のんびりいきましょう。
そして最後に。また忘れたら、この記事に戻ってきてください。私もたぶん、また忘れます😌
※本記事の制度・手続きは2026年8月時点で調べた内容です。最新の仕様は公式サイトでご確認ください。
・金融庁(公開買付制度・NISA):https://www.fsa.go.jp/
・日本取引所グループ(上場廃止など):https://www.jpx.co.jp/
・SBI証券:https://www.sbisec.co.jp/
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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。

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